小型家電リサイクルの現状と課題
調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」の論点の「廃棄物として排出されるLEDをどこで回収するのがよいか」ということに関わり、「家庭から出るLED照明器具」については、小型家電の回収・リサイクルのしくみのなかで回収・処理してはどうかという「仮説」的な提案を行った。
それでは、小型家電のリサイクルのしくみはそもそもどのようなものなのか。
以下、その概要を紹介したい。
1 法制度について
根拠法 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(2013年4月施行)
https://www.env.go.jp/recycle/recycling/raremetals/law.html
法の目的 使用済小型電子機器等に利用されている金属その他の有用なものの相当部分が回収されずに廃棄されている状況に鑑み、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講ずることにより、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与すること。
制度の概要 使用済小型電子機器等の再資源化事業を行おうとする者が再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けることで、廃棄物処理業の許可を不要とし、使用済小型電子機器等の再資源化を促進する制度
対象品目 一般消費者が消費生活の用に供する電子機器その他の電気機械器具のうち、効率的な収集運搬が可能であって、再資源化が特に必要なものを政令で指定している。具体的には、家電リサイクル法で指定しているテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等と業務用機器を除く家電製品全般を対象にしている。これらの家電製品には鉄、アルミ、有用な金属(金、銀、レアメタル等)が使用されており、資源として有効に再利用することが期待されている。また、鉛など有害物質を含むものについては適正な処理が求められている。
認定事業者 使用済小型電子機器等の再資源化のための事業をすすめようとする者は主務大臣の認定を受けなければならない。この制度のもとで認定された事業者が、使用済小型電子機器等の再資源化に必要な行為を行う際、市町村長等の廃棄物処理業の許可を必要としない。認定事業者には、資源回収技術、国内循環、廃棄物の適正処理等、事業をすすめるのに必要な技術・能力、広域かつ継続的に処理を行う経理的基礎、個人情報保護及び情報セキュリティ体制の構築が求められている。認定事業者は2019年1月現在、全国で54事業者となっている。
認定事業者協議会 認定事業者が情報を共有し、協力体制を構築していくために、小型家電リサイクル認定事業者協議会が設立された。協議会では、リサイクル技術向上にむけた情報交換、市民や市町村等への情報発信や広報・普及啓発、政策提言等を行い、小型家電のリサイクルの一層の普及を図るための活動を行っている。
http://www.sweee.jp/
2 小型家電リサイクルの現状
法制定当時、日本では年間65万トンに及ぶ小型家電製品等が使用済みになり、そのうち有用な金属は28万トン、金額換算すると844億円にもなる一方、実際に有効な資源として活用されるものは限られ、多くが埋立処分されたり、違法な事業者の手により国内外での不適切な処理が行われてきた。
法制定後、この制度への理解がひろがるなかで、小型家電のリサイクルは成果をあげている。
多くの市町村では、ボックス回収、ステーション回収などの方法の違いがあるにせよ、家庭から排出される廃棄物の中から小型家電の分別回収を行うようになった(京都市の事例は前号で紹介した)。
このなかで違法な事業者の小型家電の回収についても次第に排除されてきた。
回収された小型家電製品については、認定事業者の手により、有用な金属の再資源化がすすめられている。
認定事業者ごとにリサイクルの技術、処理量等の違いがあるものの、基本的には回収された小型家電製品について①分解・破砕し、②金属の種類やプラスチックごとに選別し、③金属精錬事業者の手により金属資源として再生されている。
このような活動がすすむなかで、小型家電のリサイクルについては、
1 埋立・焼却処分は不適切なもの
2 国内での資源循環を原則にする
という認識もひろがってきたといえるのではないか。
また、「都市鉱山」という用語も普及し、オリンピックのメダルを小型家電のリサイクルでまかなおうというキャンペーンも進められてきた。
このようなリサイクルのしくみのなかで、家庭から出るLED照明器具のリサイクルについて具体的に検討することができるのではないだろうか。
3 使用済小型電子機器等の回収に係るガイドライン
使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(2013年4月施行)にもとづき、使用済小型電子機器等を実際に回収にあたる市町村、小売業者の役割を明示し、その取組みを促進するために、2018年6月、使用済小型電子機器等の回収に係るガイドラインが策定された。
以下、その概要を紹介する。
ガイドラインの目次
1 本ガイドラインについて
1. 1 「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」の概要
1. 2 本法における市町村及び小売業者の役割
1. 3 使用済小型電子機器等の回収による便益
1. 4 本ガイドラインの位置づけ
2 制度対象品目・特定対象品目について
2. 1 制度対象品目
2.2 特定対象品目
2.3 使用を終了していない小型電子機器等の扱いについて
3 市町村内での効率的な回収について
3. 1 市町村による回収方式の種類
3.1.1 ボックス回収
3.1.2 ステーション回収
3.1.3 ピックアップ回収
3.1.4 集団回収・市民参加型回収
3.1.5 イベント回収
3.1.6 清掃工場等への持込み
3.1.7 戸別訪問回収
3.1.8 回収方式の特徴
3.2 小売業者による回収方式の種類
3.2.1 店頭回収
3.2.2 帰り便回収
3.3 適正な回収を促すための広報
4 市町村内での回収における個人情報保護対策について
4. 1 個人情報保護対策に配慮が必要と考えられる使用済み小型電子機器等
4.2 個人情報漏洩リスクと個人情報保護対策のイメージ
4.3 個人情報保護対策の事例
4.4 既存リサイクルルートにおける個人情報保護対策
(参考1)法律施行令に示す品目の分類と「商品分類表(製造業)」の関係
(参考2)使用済小型電子機器等の回収による便益
(参考3)市町村による取組事例
(参考4)モデル事業実施地域における使用済小型家電の回収結果
個々の内容については直接ガイドラインで確認していただきたいが、現在すすめている調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」との関係で確認しておきたい点をあげておきたい。
それは、このガイドラインのもとでLED照明器具がどのように位置づけられるのかということである。
使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律においては、その対象品目について「一般消費者が消費生活の用に供する電子機器その他の電気機械器具のうち、効率的な収集運搬が可能であって、再資源化が特に必要なもの」を政令で指定している。具体的には、家電リサイクル法で指定しているテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等と業務用機器を除く家電製品全般を対象にしており、法律施行令では28品目を列挙している。このうち25番目の品目に「蛍光灯器具その他の電気照明器具」があがっている。
これをふまえ、このガイドラインでも(参考1)として「法律施行令に示す品目の分類と「商品分類表(製造業)」の関係」について対比資料が示されているのだが、照明器具については
政令 |
商品分類表(製造業)における分類 |
25 蛍光灯器具その他の電気照明器具 |
電気照明器具(2942) |
という説明資料があがっている。
とくに重視しなければならないのが、「2・1 制度対象品目」の部分で「消費者が通常使用する電気機械器具のうち、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)の対象となっている品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)以外の品目については、ケーブルや充電器などの付属品も含めて、ほぼ全ての品目が制度対象品目になりますが、
① 太陽光パネル等、特殊な取り外し工事が必要である品目、
② 破損しやすく特別な収集運搬を必要とする蛍光管や電球、
については制度の対象外となっています」(ガイドライン7ページ)としている部分である。
この解説をどのように読んだらよいのか。そのまま読むとすれば、照明器具といっても光源になる「蛍光管や電球」とそれを使用した照明器具部分とを区分して考えなければならないことになり、「蛍光管や電球」については対象外になるということなのだろうか。
このうち、蛍光管は「水銀使用製品」として管理することが必要になっているので、適正処理のシステムが整ってきたので、そのシステムの継続改善が課題とされるのだろう。
他方で、LED関連の照明器具については、「LED電球」以外はまだこれから排出されてくるものなので、現時点では想定されておらず、今後の検討課題とされるのかもしれない。
どうあれ、「家庭から排出されるLED照明器具については小型家電のリサイクルの中で回収・処理してはどうか」という「仮説」的な提案との関係では、まさにこの点が調査研究課題なのである。