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「水銀に関する水俣条約」採択から5年

 

「水銀に関する水俣条約」採択から5年

 

――水銀使用廃製品の適正処理を新ルールで

 

 

 

 2013年10月、「水銀に関する水俣条約」が採択されました。この「条約」は、日本政府の提案により「水俣病のような被害を二度と繰り返してはならない」との思いを込めてその名称に「水俣」の文字が加えられ、世界各地でみられる水銀による環境汚染や健康障害について国際的な取組みをスタートさせようというものでした。

 

 「条約」採択から5年。この間に、「条約」は昨年8月16日に発効し、同9月、第1回締約国会議が開催され、「条約」の事務局体制や締約国からの報告制度などが協議されています。日本政府は23番目の締約国として「条約」に加わりましたが、水俣病の経験と教訓をふまえ、ひきつづき「条約」が有効に機能するようにリーダーシップを発揮することが求められています。

 

「条約」に対応する国内対策としては、2015年6月、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立したのをふまえ、関係する政省令についても順次施行されています。これらの施策が本来の「条約」の趣旨に合致しているのか、実際に有効なものになっているのか、これから現場の取組み実態をふまえて検証することが必要です。

 

日本においては、水銀の採掘はすでに中止され、水銀使用製品を新たに開発することも特別な事情がない限りありませんので、新ルールにしたがい水銀使用廃製品を適正処理することが主たる課題になります。

 

現在、各市町村では家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」をふまえた取組みが試行段階から本格実施に向かおうとしています。蛍光管、ボタン電池、水銀体温計、水銀温度計、水銀血圧計など水銀使用廃製品の回収方法は、市町村の実態に即し具体化されていくことになります。消費者・市民としては、何といっても消費者・市民として手軽に回収場所に持ちこめるシステムが作られているか、そして最終的に水銀使用廃製品を他の廃棄物とは分別し、確実に水銀を回収できる事業者の手により処理されていくかどうかを基準に評価し、意見をのべていくことが必要でしょう。

 

 事業所から排出される水銀使用製品については「水銀廃棄物ガイドライン」で取扱いルールが示されています。「産業廃棄物」としての水銀使用廃製品や水銀廃棄物を排出する事業者は、従来以上に「排出者責任」が求められるということを前提に、適切な事業者に処理委託をし、排出時には「マニフェスト」管理を確実に実施しなければなりません。大手の事業所では従来から環境マネジメントシステムのなかで水銀使用製品の廃棄物管理が行われてきたといえますが、中小事業者の場合、それだけの体制もコスト負担の条件もないなかで行届いた処理ができずにきたかもしれません。しかし、こんご新ルールのもとでは中小事業者にも排出事業者としての適切な処理責任が求められることになります。「産業廃棄物」である限りその処理は「排出者責任」が前提とされますので、行政からの直接的な財政的支援を期待することはできません。この際、中小事業者にふさわしい新ルールに適合する最も合理的な水銀使用廃製品の処理システムを協働の力でつくりあげていく必要があります。

 

 私たちは2006年度から開始したオフィスビル等から排出される蛍光管の分別排出・回収実験をふまえ、2010年10月、一般社団法人蛍光管リサイクル協会を設立し、蛍光管の適正処理や再資源化に関わる情報提供、オフィスビル等から排出される蛍光管回収業務の連絡調整などの事業をすすめてきました。「条約」の国内対策が本格化するなかで、私たちの活動が問題解決のためのひとつのモデルになることができれば幸いです。