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シリーズ・電池を考える(2)

シリーズ・電池を考える(2)

解決策を探る

いまでは簡単に手に入らないと思われる資料集が手もとにある。村田徳治監修『廃乾電池対策のすべて』(地域交流センター、1984年7月)である。目次をひろってみる。

第1部    総論編

(1)  乾電池の基礎知識 村田徳治

(2)  乾電池問題解決への方向 後藤典弘

(3)  有害物質の排出実態調査 占部武生

(4)  乾電池の焼却に伴う大気汚染 岩崎好陽

(5)  水銀の健康影響とくに廃乾電池の水銀による身体負荷量の評価 滝澤行雄

(6)  乾電池の埋立処分による水銀溶出 高月紘

(7)  水銀汚染寄与度における乾電池の位置づけ 藤井正美

(8)  廃乾電池の処理と資源化 村田徳治

(9)  廃乾電池問題に対する自治体の動向と今後の方向 山本耕平

第2部    事例編

第3部    資料集

この資料集が編集された経緯については確認できていないが、明らかに「暮しの手帖」が廃乾電池特集を行ったことがきっかけになっているものと思われる。「大量に水銀が使用されている乾電池が使用済みになったとき、そのまま焼却もしくは埋立処分されているがだいじょうぶか、回収して適正処理すべきだ」という問題提起については関係者として重く受け止めざるをえなかったのだと思われる。

例えば、「第2部」に収録されている福井俊介の「吹田市の廃乾電池対策」のレポートの「はじめに」は「『暮らしの手帖』で廃乾電池に対する問題が提起されて以来、新聞・雑誌に様々な形でとりあげられました。また同年11月に東京都公害研究所により開発された水銀の連続分析計によるテストの結果、都市ごみ焼却炉の排ガス中に乾電池による水銀の影響が認められた、とした発表によって一躍、廃乾電池の水銀問題は脚光を浴びることになりました」と当時の状況を報じている。同趣旨のことをいくつかのレポートが書いていることからも、「暮しの手帖」の問題提起の及ぼした影響の大きさをうかがい知ることができる。山本耕平の上記レポートでは、この問題が各地の地方議会で取り上げられただけでなく、同年10月6日、衆議院決算特別委員会でも取り上げられ重要な政策課題となったとしている。

いずれにしても、廃乾電池に大量の水銀がふくまれているならば、その焼却または埋立などの処理過程でどのような問題が起きるのかについて、廃棄物処理の現場に詳しい研究者、技術者などが急きょ情報を集約したものがこの資料集となったものとみられる。また、第2部の「事例集」には、この問題にたいして取組みを開始した市町村のレポートが収録されたのである。

 

「業界による自主回収を」との声もあったが、現実的には市町村が焼却施設や埋立施設の対策を検討するとともに、廃棄物の回収時点で住民の協力をよびかけ、廃乾電池などの有害廃棄物を分別回収することが実施可能な対策と考えられ、いっせいに取組みが始まったのである。そして、回収した廃乾電池をどこでどのように処理すればよいかを検討する中で、全国各地の市町村が連携して野村興産のイトムカ工場に送っていくためのシステムが準備されていったのである。