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「蛍光管の適正処理」への道

「蛍光管の適正処理」への道

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蛍光管には微量ながら水銀が使用されている、したがって廃棄物として排出する際には他の廃棄物とは分別し、適正処理することが必要である。また、ガラスやアルミは資源として活かすことができる。私が関わったNPO法人コンシューマーズ京都では、また、蛍光管リサイクル協会では、これらのことについて認識をひろげ、蛍光管の適正処理のシステムをつくりあげるために活動を続けてきた。「水銀に関する水俣条約」とそれにともなう国内対策のもとで、ようやく市町村の取組みがすすみ、事業所から排出される産業廃棄物としての蛍光管の分別排出についても取組みがすすみはじめたといえる。

この連載では、ここに至るまでの私が関わってきた活動についてふりかえっておきたい。

 

1 「家庭からでるやっかいなごみ」の蛍光管

2003年、京都消費者団体連絡協議会の活動を継承する形で、NPO法人コンシューマーズ京都が活動を開始し、「家庭から出るやっかいなごみ」の回収・適正処理という問題をとりあげることになった。手始めに消費者が感じている「危険なもの」「有害だと思われるもの」「ごみとしてだしにくいもの」をアンケートで拾い出してみたところ、「スプレー缶」「乾電池」「プラスチック類」などがあげられた。他方では、ゴミの収集・処理にあたる市町村が「処理困難」などを理由に「受け入れていないもの」を調べていくと、「化学薬品」「農薬」「タイヤ」「消火器」「バッテリー」「小型ガスボンベ」などがあがってきた。また、「受け入れている」ものの、「スプレー缶」や「乾電池」「蛍光管」など、その処理をめぐって多くの問題をかかえているごみも少なくないことがわかってきた。コンシューマーズ京都では、これらの「家庭から出るやっかいなごみ」の回収・適正処理を求めて、実態調査や行政・事業者団体との対話を行っていくなかで、問題解決の道を探っていくことになった。

 2005年、環境省の「エコ・コミュニティ事業」として「家電販売店と協働して蛍光管の適正処理システムづくりをめざす」というプログラムが採択された。これを機に、蛍光管は「われる、かさばる、水銀がはいっている」ということから「家庭からでるやっかいなごみ」の代表格というべきものだとして、その適正処理を求める活動が始まった。

 実施された「エコ・コミュニティ事業」についての詳細は、事業報告書が蛍光管リサイクル協会のホームページに収録してあるので参照していただきたいが、要するに、札幌市や北九州市などの先行事例に学んで、家庭から出る蛍光管を「まちの電気屋さん」に持ちこんでもらうように呼びかけたら市民の協力がえられるのかという社会実験をしようとしたものであった。取組みの結果、実に多くの消費者・市民の協力がえられた。このことから蛍光管の分別回収の方法として「まちの電気屋さん」を拠点とする回収方式の可能性を確認することができたと評価した。また、それ以後、毎年開催されるようになる「蛍光管フォーラム」につながる啓発行事も開催された。これらの取組みはマスコミでも大きくとりあげられた。

この取組みをうけるような形で、2006年10月、京都市では蛍光管の分別回収が始まった。区役所や京都市のごみ関連施設とともに協力いただく電気店が回収拠点と位置付けられ、蛍光管の適正処理を求める市民向けの啓発がすすめられた。

 

2 事業所から排出される蛍光管の適正処理へ

家庭から排出される蛍光管は「一般廃棄物」として取り扱われ、市町村により回収・処理されることが求められる。京都市では、2006年10月から分別回収の取組みが開始され、適正処理への道がひらかれたということができる。

他方では、事業所から排出される蛍光管は「産業廃棄物」として取り扱われ、「排出者」の責任で適正処理することが原則とされる。当時、大手の企業などでは環境マネジメントシステムの一環として蛍光管の分別排出が行われていたが、中小企業などでは明確な分別排出が行われていないという実態があった。事業所から排出される蛍光管の量は、家庭から排出される量に比べてとても多く、蛍光管の適正処理をめざすならば、事業所から排出される蛍光管の分別排出を求めていくことが課題として認識されたのである。

このようなことから、コンシューマーズ京都は、京都ビルヂング協会の会員事業所の協力を得て蛍光管の共同排出・回収の実験を行うことになった。実験は、コンシューマーズ京都が回収日時を決め、蛍光管の適正処理につながる廃棄物処理事業者の収集車をチャーターし、協力いただく事業所を巡回するという方式をとった。

この実験的な活動は、全労済や京都市ごみ減量推進会議等の助成対象になり、事業の成果を社会的に共有する形で行うことができたことをふくめ貴重な経験になった。

この経験と教訓が生かされ、2010年10月、一般社団法人蛍光管リサイクル協会が設立されることになった。設立当初の「入会のお願い」は、以下のようにのべている。

 

蛍光管は「家庭からでるやっかいなごみ」の代表格のものです。われやすい、かさばる、

さらに水銀が微量ながら使用されている、ということで、蛍光管をごみとしてだす消費者にとっても、一般廃棄物として収集にあたる自治体としても取り扱いに困っているものです。他方で、事業所から出される蛍光管についてもかならずしも適切な処理がされているとはいえない状態があります。

そこで、このたび、蛍光管の適正処理・再資源化のシステムづくりをめざし、一般社団法人蛍光管リサイクル協会を設立いたしました。

この会では、その目的に資するため、次の事業を行うことにしています。

(1)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる情報提供・教育啓発

(2)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる調査研究と提言

(3)オフィスビル等から出される蛍光管の回収業務の連絡調整

(4)家庭から排出される蛍光管の地域回収の連絡調整

(5)前各号に掲げる事業に付帯又は関連する事業 

この会では、当面、NPO法人コンシューマーズ京都がすすめている諸活動に協力しながら、これから活動にご参加いただくみなさまと協議を重ねながら独自の事業内容を具体化していくことにしています。

 

これを機に、コンシューマーズ京都と協力いただく事業所との連携により、オフィス等から排出される蛍光管の共同排出・回収の事業がはじまったのである。

 

3 蛍光管の適正処理のルールづくりへ

 「水銀に関する水俣条約」が、2013年10月10日、採択された。「条約」の名称には、日本政府の提案により、「水俣病のような被害を二度と繰り返してはならない」との思いを込めて「水俣」の文字が加えられた。この「条約」のもとで、水銀の輸出入規制、水銀使用廃製品の適正処理、水銀の管理保管システムの構築など、さまざまな取組みがすすめられることになった。世界各地でみられる水銀による環境汚染や健康障害について国際的な取組みがまさにスタートラインについたといえるものであった。

コンシューマーズ京都は、国連環境計画(UNEP)のもとで国際的な水銀規制の動きが具体化した時期から、「条約」の採択、それにともなう国内対策の準備にいたる経過のなかで、「蛍光管フォーラム」「水銀条約セミナー」の開催などを通じてタイムリーな情報提供、意見交換の場を持つとともにくりかえし提言を行っている。そして、蛍光管の適正処理のルールづくりへ京都からの発信力を大きくするために、京都市会をはじめとする京都府内自治体での意見書採択を求める活動に取組んだ。その結果、コンシューマーズ京都が提出した陳情書の審査をうけて、2014年3月、京都市会で以下のような「意見書」が全会一致で採択されることになった。

 

「水銀に関する水俣条約」の早期発効と

水銀含有廃棄物の国内適正処理体制の確立を求める意見書

 

昨年10月10日、水銀及び水銀化合物の人為的な排出から、人の健康及び環境を保護することを目的にした「水銀に関する水俣条約」が、約140箇国の賛同を得て採択された。我が国は、水俣病と同様の健康被害や環境破壊を繰り返してはならないとの決意と、こうした問題に直面している国々の関係者が対策に取り組む意思を世界で共有していくという立場から、本条約を水俣条約と名付けることを提案し、全会一致で各国の賛同を得たものであり、今後、国際社会との緊密な連携と、国内における水銀対策の更なる強化が求められる。

京都市においては、市民の安心・安全を守るため、家庭ごみの拠点回収制度の充実を通じて、水銀を含有する蛍光管、水銀体温計、水銀血圧計の分別回収等に先駆的に取り組んできた。しかしながら、多くの地方自治体が水銀を含有する家庭ごみのすべてを回収することは困難であり、水銀の適正な処理を確保するためには、製造・販売事業者も協力して回収する仕組みが不可欠である。

よって、国におかれては、「水銀に関する水俣条約」の早期発効に向け、国際的な働き掛けを強化するとともに、法整備をはじめとした、水銀含有廃棄物の適正処理を確保するための実効性の高い枠組みを早期に確立することを求める。

 

京都市会の「意見書」採択につづき、同じような「意見書」が京都府議会ほか8つの府内自治体の議会で採択された。それぞれ陳情書の提出、議員への要請の成果であったと評価できる。

 

4 参議院環境委員会参考人としての意見表明

 「水銀に関する水俣条約」の採択をふまえ、国内対策の検討がすすめられた。その結果、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」と「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が第189国会に上程された。

この法案審議にあたっては、国会議員要請、国会傍聴などの活動を行った。

このなかで、2015年6月9日、参議院環境委員会において、私が参考人として意見表明をする機会を与えられた。私は、実効性ある法制度の実現のために、以下のような「意見の概要」を提出し、意見表明(約15分)ならびに質疑に対応した。

 

1 市町村の責務と国の責務に関して

・我が国では家庭からでるごみは一般廃棄物として市町村によって処理される。したがって、家庭から出る水銀廃棄物についても市町村の手で回収されることになる。

・市町村が家庭からの水銀廃棄物の回収について役割をはたしていくためには、現状からすると、相当な努力をお願いしなければならない。

・取組みの輪をひろげるために、頑張っている市町村の事例を紹介・普及することや経験交流をすすめることも必要である。

・とはいえ、市町村の努力でできることとできないことがある。

・昨年、京都府、京都市など合計10の自治体から「水銀条約の早期発効と国内対策の確立を求める意見書」が提出されたが、そのための検討のなかでは「自治体でできることは限られるので、国の対策を求める」という論点が強調された。たとえば、京都市からの「意見書」では「多くの自治体が水銀を含有する家庭ごみのすべてを回収することは困難であり、水銀の適正な処理を確保するためには、製造・販売事業者も協力して回収する仕組みが不可欠である」としている。

・したがって、今回の法案のもとで、国として市町村の要望をよく聞き、その取組みに対して「技術的助言」の枠組みをこえた財政的支援などのバックアップをいかに行うのか、国が関与した回収・適正処理システム作りの推進がどのように行われるのか、注目したい。

2 事業者の責務に関して

(1)メーカー(製造者)としての責務について

・水銀条約が採択され、それをふまえた国内対策がすすめられるなかで、メーカー(製造者)として、水銀を使用した製品を積極的に開発するということはもはや考えられないだろう。

・したがって、メーカー(製造者)としては、これまでに製造してきた製品が廃棄物として回収・適正処理をしなければならないときにどのような役割と責任を果たしてもらうのかについての検討が必要になるであろう。

・このような点から、この際、水銀廃棄物の回収・適正処理の課題に関わり、いわゆる「拡大生産者責任」の考え方をどのように取り扱うのか、検討を深めていただきたい。

(2)水銀製品に関する表示・情報提供について

・今回、事業者の責務に関わり、水銀製品に関する表示・情報提供の課題があげられたが、メーカー(製造者)として、水銀製品について水銀が使用されていることや、使用時における注意点、廃棄物として適正処理を行うことが必要なことを消費者・市民にわかりやすく伝えてもらうことはとても大事なことだと思う。

・というのも、例えば、消費者・市民のなかで「蛍光管に水銀が使用されている」ことについての認知度はとても低い現実がある。あるいは、「水銀体温計」と「電子体温計」の違いも正しく認識されていないのが現実である。

・したがって、メーカー(製造者)として、水銀製品に関する表示・情報提供を積極的に行うとともに、水銀に関する消費者教育を積極的に担ってもらうことを要望しておきたい。

・同時に、消費者・市民が水銀製品であることを認識したとき、その製品の回収・適正処理システムが整備されていなければ、実効性のないものになってしまう。

・消費者・市民としては水銀製品に関する表示・情報提供がすすめられるのとあわせて、できるかぎり身近な場所で簡便に回収・適正処理されていく社会的システムの整備がいそがれることを強く要望したい。その際、メーカー(製造者)としてすべてを市町村にまかせてしまうのでなく独自の役割を発揮してもらいたい。

(3)排出者としての責務について

・大手の事業所では、これまでからも水銀廃棄物については産業廃棄物として排出していると思われるが、中小零細事業所ではあいまいになっている。中小零細事業所に対する啓発とともに、さしあたっての排出システム整備のためのバックアップが必要なのではないか。

・医療機関には独自の回収・適正処理のシステム整備について役割を果たしていただきたい。

3 回収された水銀の保管について

・回収された水銀製品から水銀を取り出すことはできる。それでは取り出した水銀をどうするのか。

・水銀については、原則としてこれから輸出できない、国内での需要もなくなる、というなかで、将来にわたり環境に負荷をかけない方法で保管していかねばならないが、そのための技術開発と保管のためのコストをだれがどのように負担するのかが問われることになる。国としてこの点についても積極的に関わり、検討を深めていただきたい。

4 水銀等に関わる排出基準について

・「大気汚染防止法の一部改正案」に関わっては、廃棄物処理施設の環境負荷をおさえるとともに、石炭火力発電施設などの環境負荷をおさえるためにどのような施策が必要なのか、これまでの公害防止・環境対策の経験と教訓をふまえて、十分な検討を深めていただきたい。

・その前提として、水銀排出が想定される関連施設の排出実態がどのようなものなのかを把握し、データを公表していただきたい。

5 「水銀等による環境の汚染の防止に関する計画」の作成等について

・「水銀等による環境の汚染の防止に関する計画」や関連する政省令の策定をすすめるにあたっては、自治体、事業者、消費者・市民の声に十分耳を傾け、「的確かつ円滑な実施」が確保できるものにしていただきたい。

・また、その前提として今回の法律案の考え方や趣旨について周知徹底を図っていただきたい。

 

法案は審議の結果、付帯決議をともなう形で成立した。私の意見も付帯決議にくみこまれたと評価できるものであった。

これをうけて関係する政省令についても準備され、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令」、「水銀による環境汚染の防止に関する法律の一部の施行期日を定める政令」「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令」「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令」が公布された。

 

5 新ルールのもとで蛍光管の適正処理を

 「水銀に関する水俣条約」は2017年8月16日に発効した。日本政府は一締約国として「条約」に参加するだけでなく、水俣病の経験と教訓をふまえ、ひきつづき「条約」が有効に機能するようにリーダーシップを発揮することが求められている。

「条約」に対応する国内対策についても、2015年6月、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立したのをふまえ、関係する政省令が順次施行された。

日本においては、水銀の採掘はすでに中止され、水銀使用製品を新たに開発することも特別な事情がない限り考えられないので、水銀使用廃製品を新ルールにしたがい適正処理することが主たる課題になる。

現在、各市町村では家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」をふまえた取組みが試行段階から本格実施に向かおうとしている。蛍光管、ボタン電池、水銀体温計、水銀温度計、水銀血圧計など水銀使用廃製品の回収方法は、市町村の実態に即し具体化されていくことになる。消費者・市民としては手軽に回収場所に持ちこめるシステムが作られているか、そして最終的に水銀使用廃製品を他の廃棄物とは分別し、確実に水銀を回収できる事業者の手により処理されていくかどうかを基準に評価し、意見をのべていくことが必要である。

 事業所から排出される水銀使用製品については廃棄物処理法と「水銀廃棄物ガイドライン」で取扱いルールが示されている。「産業廃棄物」としての水銀使用廃製品や水銀廃棄物を排出する事業者は、従来以上に「排出者責任」が求められるということを前提に、適切な事業者に処理委託をし、排出時には「マニフェスト」管理を確実に実施しなければならないのである。

この点については事業規模の大小にかかわらず原則的に求められることである。大手の事業所では従来から環境マネジメントシステムのなかで水銀使用製品の廃棄物管理が行われてきたといえるが、中小事業者の場合、それだけの体制もコスト負担の条件もないなかで行届いた処理ができずにきたかもしれないが、今後は新ルールへの対応が必要になっているのである。この際、中小事業者にふさわしい新ルールに適合する最も合理的な水銀使用廃製品の処理システムを協働の力でつくりあげていくことが求められるのではないか。

 このようななかで、2006年度から開始したオフィスビル等から排出される蛍光管の分別排出・回収実験をふまえ、2010年10月に設立された蛍光管リサイクル協会は、問題解決のためのひとつのモデルにならないかと活動をすすめてきた。

蛍光管の適正処理や再資源化に関わる情報提供、オフィスビル等から排出される蛍光管回収業務の連絡調整など、蛍光管リサイクル協会の活動は、「条約」の国内対策が本格化するなかで、ますます重要な役割をになう必要があるのだろうが、他方では、蛍光管リサイクル協会自身の組織財政基盤の強化が避けて通れない課題である。

 

6 残された課題

 「家庭からでるやっかいなごみ」にはじまった「蛍光管の適正処理のルールをつくろう」という活動は、「水銀に関する水俣条約」にともなう国内対策の整備により、「新ルールのもとで適正処理を」という活動に発展してきた。

照明器具市場の主役がこれからLEDに代わっていくというものの、流通ストックとしても、廃棄の現場でも、当分、蛍光管が主役であることに変わりはない。

以下、残された課題をまとめておきたい。

 

1)     関連情報の徹底

 「水銀に関する水俣条約」にともなう国内対策によって一般廃棄物としての蛍光管はどのように排出しなければならないのか、産業廃棄物としての蛍光管はどのように排出しなければならないのか、排出者の立場に立った必要な情報がまだまだ行き渡っていない。一般廃棄物については回収する市町村からの情報が出されているが、とくに産業廃棄物としての蛍光管については「排出者責任」が問われる事業者が意識的に情報をあつめなければならないのが現状である。関連情報の徹底をはかることはひきつづき最重要課題である。蛍光管リサイクル協会のホームページやパンフ、チラシは役に立つ情報を伝えているものと思っている。

2)     確実な回収

 蛍光管の回収・適正処理は確実にすすみはじめたということができるが、まだまだ十分ではない。家庭から排出される蛍光管は、多くの場合、拠点回収によるため、「割れる」「かさばる」蛍光管を決められた回収拠点まで持ち運ぶことができず、家庭で眠ったまま置かれているというケースは少なくない。事業所から排出される蛍光管は、これまでの排出方法では排出できなくなって困っているというケースがあるようだ。中小事業者にとっては、蛍光管を確実に適正処理するルートにつないでいく廃棄物業者と新規に契約し、マニフェスト管理をしていくということが簡単ではないようだ。こうした問題点をクリアし、蛍光管の回収を確実におこなっていくことが必要である。

3)     適正な最終処分

 回収された蛍光管の最終処分について、焼却処分することはなくなっていくのだろうが、埋立処分についてはまだ継続していくかもしれない。しかし、水銀による環境汚染防止という基本的な立場からすれば、水銀を回収することを目的にした最終処分につなげることが必要であろう。

4)     回収された水銀の適切な保管

 水銀回収まで行う蛍光管処理事業者は実際には限られるので、まさに個別・具体的な事業者ごとの課題になるのだが、これまでと違い回収された水銀を輸出することはできないし、国内での需要も減少するなかで、回収された水銀の適切な保管体制・システム構築を急いでもらいたい。

また、そのためのコストについてだれがどのように負担するのがよいのかについても考え方を明確にしていく必要があるだろう。

 

これらの課題を解決しながら、蛍光管の適正処理が確実に進むことを願っている。

蛍光管の適正処理への道はまだ半ばである。

 

<注>

1 2005年に環境省エコ・コミュニティ事業として採択され実施した「家電販売店と協働して蛍光管の適正処理システムづくりをめざす」というプログラムの事業報告書は蛍光管リサイクル協会のホームページに収録しているのでぜひ参照していただきたい。それ以後の活動の原点になるもので、情報量も多く、充実したものになっている。

2 京都市が蛍光管の分別回収システムに着手するうえで、同時期に実施されたごみ有料化にともなう特別財源が活用された。

3 事業所から排出される蛍光管の共同回収システムのアイデアは「オフィス町内会」のアイデアから学んだものである。蛍光管の適正処理に関わるコストのなかでとても重みのある収集運搬コストを分担し合うことでコスト削減できないかという現実的な課題でもあった。設立された蛍光管リサイクル協会の主たる事業はこの取組みであった。

4 「蛍光管フォーラム」「水銀条約セミナー」は京都のみならず、東京、大阪、名古屋、高知など各地で開催され、「水銀に関する水俣条約」の準備過程、「条約」採択をうけての国内対策の準備状況などの情報を継続的に伝達するうえでとても重要な役割をはたしたといえる。これらは地球環境基金の助成によって成り立ったものであり、毎年の事業報告書に関連情報が集約されている。

5 「水銀に関する水俣条約」にともなう国内対策として蛍光管だけでなく水銀体温計、水銀血圧計、乾電池などの確実な回収、適正処理の課題があげられ、全国各地の市町村でモデル事業が取り組まれた。コンシューマーズ京都も京都市と協力して水銀体温計、水銀血圧計の回収実験に取り組んだ。

6 蛍光管の適正処理という点では事業所から排出される蛍光管の確実な回収、適正処理の課題が最後の課題になると思われる。事業者の「排出者責任」を自覚した行動と、それを支える社会的なシステムの確立が求められるところである。

7 蛍光管リサイクル協会の活動については、今後の持続的な事業発展のために総合的な振りかえり・評価が必要になっている。