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シリーズ・電池を考える(3)

シリーズ・電池を考える(3)

適正処理への道

水銀が含まれる乾電池の適正処理のためには、消費者・市民が廃乾電池を分別排出し、市町村が分別回収することが必要になる。そのためには、消費者・市民への意識啓発をすすめるとともに、市町村の側に分別回収をするシステム整備やコスト負担が求められるのだが、「暮しの手帖」の報道後、各地の市町村の取組みが急速にすすめられた。

前記資料集『廃乾電池対策のすべて』の山本耕平レポートは、全国の自治体にアンケートとヒアリングを行った結果、「昭和58年3月末時点で何らかの形で乾電池の回収をおこなっている」のが69市、「近く実施する」というのが65市、さらに「実施の方向で検討中」というのが98市、あわせると232市(アンケートに回答があった市の80%)にのぼったといい、「おそらく短期間でこれだけのシステムの変更を行ったことは、清掃行政にとってもはじめての経験ではなかろうか」と報じている。

また、同レポートは、回収した廃乾電池の処理処分について多くの市は「ドラム缶等で保管」、「コンクリートづめして埋立」「コンクリートづめして保管」しているのが実態で、専門の処理業者に委託しているのは6市で、これらの市ではすべて北海道の水銀回収工場へ送っているという。

このような状況をふまえ、同レポートは、早急に廃乾電池の処理処分のための「受け皿整備を進める必要がある」「これは国と業界がになうべき役割である」「費用負担の仕組みについても早急な検討が求められよう」としている。

ところで、ここに出てくる「北海道の水銀回収工場」が「野村興産イトムカ鉱業所」である。野村興産株式会社は、もとは野村鉱業株式会社の社名で「水銀鉱山」業として成長してきた企業であるが、その歴史をふまえ、昭和48年、水銀含有廃棄物の無害化処理並びにリサイクル施設をもつ企業としてあらためて発足している。水銀を生産する際の精製技術を、水銀含有廃棄物から水銀を回収する技術として活かすことにより、廃乾電池をふくめさまざまな水銀含有廃棄物の処理処分に役割を発揮してきたのである。

全国各地の市町村で廃乾電池の分別回収の体制が準備され、回収された廃乾電池については、とりあえず保管するという市町村もあったが、多くの市町村から、この「野村興産イトムカ鉱業所」に集中していくことになるのである。そして、その流れは、昭和61年2月、(社)全国都市清掃会議によって「使用済み乾電池の広域回収処理センター」に指定されたことにより加速していった。

 

全国都市清掃会議のホームページには「使用済み乾電池等広域回収処理事業」についての報告記事がある。この事業は厚生省(現環境省)からの「使用済み乾電池の適正処理の推進を援助する組織体制の整備に関する依頼(昭和60年8月)」に基づき、(社)全国都市清掃会議内に「使用済み乾電池等広域回収・処理連絡会」を設置し、全国の市町村を対象に「使用済み乾電池等の広域回収・処理計画」により分別・収集された使用済み乾電池等を運搬・処理・処分するシステムの運営・管理事業として実施されてきたもので、昭和61年、243団体、3,056トンにはじまり、その実績は平成31年3月までの累計で、186,554トンに達しているとされている。