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シリーズ・電池を考える(5)

シリーズ・電池を考える(5)

あらためて「乾電池の適正処理」とは

 

これまで「暮しの手帖」にはじまる「乾電池問題」をたどってきたが、考えてみればもう30年以上前のことである。元号でいっても「昭和」から「平成」、さらに「令和」になっている。

この間に、使用済み乾電池の広域回収処理のシステムも動いてきたし、乾電池の「水銀ゼロ使用」化もすすんだ。他方で、電池類の開発は急速にすすみ、さまざまな電池が暮らしのなかで使用されるようになった。

主な電池をあげてみると、いわゆる「化学電池」だけでも以下のようなものがあげられる。

●一次電池(充電できない、使いきりの電池)  

 マンガン乾電池/アルカリ乾電池/リチウム一次電池/

 酸化銀電池/アルカリボタン電池/空気亜鉛電池

●二次電池(充電すれば繰り返し使える電池)

 ニッケル・水素電池/ニッケル・カドミウム電池

 リチウムイオン二次電池/鉛蓄電池

現在、電池をめぐる問題といえば、どちらかというとリチウムイオン電池の開発問題、さらにそれに続く「全固体電池」の開発問題など、「新しい電池」の開発に目を向けられることが多いようである。

しかし、「暮しの手帖」が問題にしたマンガン乾電池やアルカリ乾電池をはじめ、さまざまな電池が使用済みになり、一般廃棄物として、あるいは産業廃棄物として排出され続けている現実があることは間違いないのだが、では、それらの回収処理の実態はどうなっているのだろうか。

今回の「あらためて電池について考える」という調査研究では、ここに論点のひとつがある。

「暮しの手帖」が問題にしたマンガン乾電池、アルカリ乾電池についていえば、「水銀ゼロ使用」化によって問題は基本的に解決し、水銀による環境汚染リスクは考慮しなくてよいということから、「不燃ごみ」として回収し、そのまま埋立て処分されてしまうケースも少なくないということである。

他方で、「水銀に関する水俣条約」をふまえた「家庭から排出される水銀使用製品の分別回収ガイドライン」では、「1990年代以前に国内で製造された乾電池には水銀が使われていた。また海外で生産された乾電池には水銀が含まれている可能性があるが、現在、日本で製造されている乾電池には水銀はつかわれていない。古い乾電池や海外で生産された乾電池をそれ以外の乾電池と区分して回収することは現実的には難しく、また、乾電池に含まれる亜鉛、マンガンなどは資源としての利用価値もあることから、できるだけ乾電池は「乾電池」という区分でまとめて分別回収することが望ましい」としている。

また、使用済み乾電池の広域回収処理にあたっている野村興産「イトムカ鉱業所」の処理現場からはいまなお水銀が回収されているということが報告されている。2019年度のその実績は、水銀含有平均値を22.0ppmとすると、水銀回収量は約341kgにおよぶということである(「2020年野村興産株式会社リサイクル事業ご報告書」4ページ参照)。

 

使用済み乾電池は「不燃ごみ」で回収し、埋立て処分をすることでよしとするのか、あるいは、ひきつづき水銀対策の観点から適正処理を行う必要があるのか、この機会に、あらためて乾電池の適正処理とは何かを考え、関係者と意見交換を深めてみたいと考えている。