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シリーズ・電池を考える(8)

シリーズ・電池を考える(8)

電池由来の発火事故

今回の調査研究の課題のひとつは「電池由来の発火事故」の現状やその対策・課題を明らかにすることにある。

電池の事故として無視できないのがコイン形電池・ボタン電池などを乳幼児が誤飲する事故があげられる。この点について、電池工業会は、未使用・使用済みのボタン電池類は子供の手の届かない場所に保管することをよびかけるとともに、誤飲防止パッケージの導入の取組みも進めている。また、万一、乳幼児が誤飲した場合、すぐに医師と相談してほしいとしている。注意したいことである。

本題というべき「電池由来の発火事故」については、製品使用段階での事故と、使用済みリチウムイオン二次電池等による発火事故とがある。

まず製品使用段階での事故についてである。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、スマホやノートパソコン、電動工具などにリチウムイオン二次電池が広く使用されるようになり、それにともなう製品事故が増加しているという。NITEに通知された製品事故情報によれば、2014年から2019年までにリチウムイオン二次電池搭載製品の事故は、合計982件にのぼるという。<事故件数は年度ごとの集計であるが、2019年度は4月から12月までの集計である>

 

主要な製品の事故件数をあげてみる。

 

製品名

2014

2015

2016

2017

2018

2019

総計

モバイルバッテリー

20

24

49

36

55

24

208

ノートパソコン

23

29

31

48

36

36

203

スマートフォン

12

22

36

25

18

119

充電式電気掃除機

10

52

73

電動アシスト自転車

10

11

47

ラジコン玩具

11

45

充電式電動工具

15

17

40

照明器具

14

32

LEDヘッドライト

22

タブレット端末

17

それ以外もふくめた総計

98

102

150

188

213

231

982

 

 

 

これらの製品事故の原因については現品の焼損が著しいなどの理由により解明できない事例が少なくないようであるが、NITEでは、ひとつの問題として非純正バッテリー(いわゆる互換品として販売されている他社製のバッテリー製品)に由来すると思われる事故事例が目立つことから、非純正バッテリーの使用について注意喚起をしている。

<以上、NITEの2020年1月23日付け広報資料をもとにしました>

使用済みリチウム二次電池等に由来する発火事故については、回収・保管中の事故、回収時のパッカー車の炎上事故、破砕処理施設等での発火事故などが報じられている。

2020年1月10日付の朝日新聞は「不燃ごみなどに混入したリチウムイオン電池が、リサイクル処理施設で発火したとみられる事故が急増している。リチウムイオン電池に使われている可燃性の有機溶媒に、処理時に強い圧力がかかると燃えるためだ。国や自治体、事業者は対応を迫られている」との記事を配信した。

この記事で紹介されている日本容器包装リサイクル協会では、同協会のホームページで「リチウムイオン電池等の発火物が原因になる発煙・発火トラブル」とする記事を掲載している。「乾電池や、その他の電池についても、発火の可能性はありますが、リチウムイオン電池は中に燃えやすい液体が入っていることもあり、発火リスクが高いといわれています。リチウムイオン電池は、プラスチックリサイクル工場における第一段階である「ベール解砕機」や「破袋機」の刃によって、リチウムイオン電池が押し潰されて、ショート・発火し、周囲にあるプラスチックに着火してしまうことがあります」というのである。

そして、全国の再生処理事業者での発煙・発火トラブル件数について、平成25年度、32件、26年度、41件、27年度、42件、28年度、49件、29年度、56件、30年度、130件、令和元年度、301件と、その急増ぶりを紹介している。

また、発煙・発火トラブルの原因物について、つぎのデータを示している。

 

発煙・発火原因物

令和元年度(件数)

前年度(件数)

前年度比(%)

リチウムイオン電池等の充電式電池(使用されていた電子機器は不明)

142

80

178

加熱式タバコ

59

15

393

モバイルバッテリー

24

1200

掃除機バッテリー

267

乾電池

140

ライター

発火原因特定できず

59

25

236

合計

301

130

232

 

また、このような事故を削減するために、同協会では、以下のアイデアを紹介している。

1 リチウムイオン電池を製造・利用する企業が、明確なリサイクルマークを表示する。(輸入品は、輸入した企業が表示する)

2 リサイクルマーク表示漏れ、表示間違いがないかどうか、チェックし是正する仕組みをつくる。

3 機器本体と、リチウムイオン電池を容易に分離可能な設計にする。各業界のガイドラインなど。

 

4 機器本体は小型家電リサイクルのルートにのせ、リチウムイオン電池は一般社団法人JBRCルートで回収・リサイクルする。