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蛍光管リサイクル協会の10年

蛍光管リサイクル協会の10年

 

2020年10月1日、蛍光管リサイクル協会は一般社団法人として設立されて以来10年になります。これを機に、あらためてその活動をふりかえり、その成果と今後の課題を確認することにします。

 

1 一般社団法人設立まで

 蛍光管には微量ながら水銀が使用されています、したがって廃棄物として排出する際には他の廃棄物とは分別し、適正処理することが必要です。また、ガラスやアルミは資源として活かすことができます。

このようなことから、NPO法人として活動を開始したコンシューマーズ京都では、蛍光管の適正処理のシステムをつくりあげるために活動を続けてきました。

 2005年、コンシューマーズ京都が提案した「家電販売店と協働して蛍光管の適正処理システムづくりをめざす」というプログラムが環境省の「エコ・コミュニティ事業」として採択されました。この「エコ・コミュニティ事業」では、札幌市や北九州市などの事例に学んで、家庭から出る蛍光管を「まちの電気屋さん」を拠点に回収することが可能かという社会実験をしようとしたものでした。

取組みの結果、蛍光管の分別回収の方法として「まちの電気屋さん」を拠点とする回収方式の可能性を確認することができたと評価し、その実現をよびかけました。

この取組みをうけるような形で、2006年10月、京都市では蛍光管の分別回収が始まりました。区役所や京都市のごみ関連施設とともに協力いただく電気店が回収拠点と位置付けられ、蛍光管の適正処理を求める市民向けの啓発がすすめられました。

他方では、事業所から排出される蛍光管は、大手の企業などでは環境マネジメントシステムの一環として蛍光管の分別排出が行われていましたが、中小企業などでは明確な分別排出が行われていないという実態がありました。

事業所から排出される蛍光管の量は、家庭から排出される量に比べてとても多く、蛍光管の適正処理をめざすならば、事業所から排出される蛍光管の分別排出を求めていくことが課題として認識されたのです。

このようなことから、コンシューマーズ京都は、京都ビルヂング協会の会員事業所の協力を得て蛍光管の共同排出・回収の実験を行うことになりました。この社会実験は、全労済や京都市ごみ減量推進会議等の助成対象になり、事業の成果を社会的に共有する形で行うことができたことをふくめ貴重な経験になったといえます。

 

2 一般社団法人の設立

このような経験のうえに、2010年4月、蛍光管リサイクル協会の設立準備会合がよびかけられました。準備会合が重ねられ、設立する組織の概要が固められていきました。

確認されたことは

・法人の形態としては一般社団法人とすること

・事業内容は、教育啓発、調査研究とあわせて蛍光管の共同排出・回収システムづくりをすすめること

・会員には正会員とともに、利用会員、賛助会員もみとめること

・事務局はコンシューマーズ京都におくこと

などでした。また、これらの確認内容をもりこんだ定款、役員候補者も確認されました。

 このような準備活動を経て、2010年10月1日、一般社団法人蛍光管リサイクル協会は設立され、公証人役場で定款の認証をうけ、ただちに京都地方法務局に設立登記を行い、法人としての活動を開始することになったのです。

定款には、「目的」として「蛍光管の適正処理・再資源化のシステムづくりをすすめる」ことが記され、その事業内容としては、その目的に資するため、次の事業を行うことにしています。

(1)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる情報提供・教育啓発

(2)蛍光管の適正処理・再資源化に関わる調査研究と提言

(3)オフィスビル等から出される蛍光管の回収業務の連絡調整

(4)家庭から排出される蛍光管の地域回収の連絡調整

(5)前各号に掲げる事業に付帯又は関連する事業 

これを機に、蛍光管リサイクル協会の活動がはじまり、ご協力いただく事業所・オフィス等から排出される蛍光管の共同排出・回収の事業がはじまったのです。

 

3 「水銀に関する水俣条約」と国内対策の具体化

 蛍光管リサイクル協会の活動がはじまるのを前後して、国連環境計画(UNEP)のもとで国際的な水銀規制の動きが具体化しました。

このような動きに対して、コンシューマーズ京都は、蛍光管の適正処理を求めてきた経過をふまえ、2013年10月に「水銀に関する水俣条約」が採択され、それにともなう国内対策の準備にいたる一連の経過のなかで、「蛍光管フォーラム」「水銀条約セミナー」の開催などを通じて情報提供、意見交換の場を持つとともにくりかえし提言を行っています。

そして、蛍光管の適正処理のルールづくりへ京都からの発信力を大きくするために、京都市会をはじめとする京都府内自治体での「意見書」採択を求める活動に取組みました。

蛍光管リサイクル協会は、これらの活動に共同で取組みをすすめました。

「水銀に関する水俣条約」は2017年8月16日に発効しました。「条約」に対応する国内対策についても、2015年6月、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立したのをふまえ、関係する政省令が順次施行されていきました。

日本においては、水銀の採掘はすでに中止され、水銀使用製品を新たに開発することも特別な事情がない限り考えられないことから、水銀使用廃製品を新ルールにしたがい適正処理することが主たる課題になりました。

各市町村では家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」をふまえた取組みがもとめられることになり、蛍光管、ボタン電池、水銀体温計、水銀温度計、水銀血圧計など水銀使用廃製品の回収方法は、市町村の実態に即し具体化がすすめられました。

 「産業廃棄物」としての水銀使用廃製品や水銀廃棄物を排出する事業者は、従来以上に「排出者責任」が求められるということを前提に、適切な事業者に処理委託をし、排出時には「マニフェスト」管理を確実に実施しなければならなくなりました。

 このように「水銀に関する水俣条約」にともなう国内対策が具体化されていくなかで、蛍光管リサイクル協会は、事業所・オフィス等から排出される蛍光管の共同排出・回収の事業の現場に即した普及啓発に取り組んでいきました。

 2017年10月、蛍光管リサイクル協会は、「水銀使用製品産業廃棄物」についての新たな対応について見解をまとめ、「蛍光管は新ルールで適正処理を」とよびかけています。

2018年、蛍光管リサイクル協会は「水銀使用製品の確実な回収・適正処理のために」というプログラムで京都市ごみ減量推進会議の助成金をうけ、これらの内容をパンフ、チラシ、ホームページなどで広くよびかけていくことになりました。

また、これまでコンシューマーズ京都の主催行事として実施されてきた「蛍光管フォーラム」についても、この助成事業の関連行事の位置づけのもと、蛍光管リサイクル協会主催の行事として企画実施されました。

2019年1月、蛍光管リサイクル協会の事務所が、新たに発足した京都循環経済研究所に置かれることになりました。

 

4 調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」

 2019年、蛍光管リサイクル協会は、京都市ごみ減量推進会議助成事業として調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」にとりくみました。

調査研究の手法としては、先行研究の調査をふまえ、関係者のヒアリング、現場見学、LED手分解実証事業にとりくみ、調査結果を報告する「LEDフォーラム」を開催し、関係者と意見交換を深めることとしました。

 調査研究の結果、次のような成果と課題を確認することができました。

●LEDのリサクルは技術的には可能であるが、課題は多い

今回の調査研究によって、LEDのリサクルは手分解であれ、機械破砕であれ、技術的には可能であることがわかりましたが、他方で、事業として成立させるためには課題が多いことも確認されました。なかでもいかに効率よく回収し、リサイクル事業者のところに集めることができるか、そのためのコストに見合う「売却益」がえられるかという問題はなかなかむつかしい問題です。現実的にはリサイクルコストをだれがどこで負担するのかという問題に直面することになりそうです。

●自治体にとっては財政負担になるのが現実。拡大生産者責任の議論ができるか。

家庭から排出されるLEDについては当分まとまって排出されるわけではありませんので、時間をかけて問題の解決に当たればよいのですが、いまのままであれば自治体がリサイクルに関わるコストを負担せざるをえないことになります。今回、メーカーからの意見が集約できませんでしたが、拡大生産者責任についての議論がさけられないのではないかと思われます。

●産業廃棄物としての回収・処理システムの確立はいそぐ必要がある

事業所から排出されるLEDについては「産業廃棄物」として回収・処理するためのシステム作りを急ぐ必要があります。LEDは蛍光管のように水銀がふくまれないから他の産業廃棄物と同様の処理でよいとするのか、やはり独自にリサイクルシステムをつくるべきなのか、関係者のなかでの検討を深める必要がありますが、家庭からのLEDに比べ同じものが大量に出てくる条件を活かしたリサイクルの可能性を探ることが課題になります。

 

5 あらためて電池について考える

 2020年、蛍光管リサイクル協会は、京都市ごみ減量推進会議助成事業として調査研究「あらためて電池について考える」に取組んでいます。

今回の調査研究では、「電池と水銀」について歴史的な経緯を確認するとともに、乾電池の排出・処理(再資源化をふくむ)の実態・課題を確認し、こんごにむけて必要な対策を検討することにしています。

また、「電池由来の発火事故」についてその実態をあきらかにし、メーカー段階での対策、廃棄物として排出・処理される段階での対策を検討することにしています。

これまでに基礎的な情報を整理する作業がすすめられ、これから11月20日に開催される公開研究会にむけて、

・水銀対策としての乾電池処理のこれから

・リチウムイオン電池などに由来する発火事故対策

について掘り下げていくことになります。

 

6 これからの課題

設立10年をむかえ、蛍光管リサイクル協会にはどのような活動が求められるのか、蛍光管リサイクル協会自身の運営はどうあるべきなのか。

まずは、会員のニーズにあった活動をくみたてていくことが何よりも大事です。

その点でいえば、現在、使用済み蛍光管の共同排出・回収に取り組んでいますが、利用いただく事業所の数が次第に増え、年2回の共同排出・回収については、現在、それぞれ2日間、のべ4日の取組みになっています。この取組みを継続していくことが基本的な課題です。

この間、使用済みの蛍光管とともに、使用済み電池の回収を希望される事業所がふえており、これらの要望にもこたえていく必要があります。

さらに、近い将来、LED照明器具の排出希望が出てきたとき、現在のシステムにその要望を組み込むことができるかどうか、関係者との協議検討が必要です。

他方で、蛍光管リサイクル協会の運営については、その活動を持続的に発展していくための条件整備が急務になっています。