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公開研究会「あらためて電池について考える」主催者報告

公開研究会「あらためて電池について考える」主催者報告

 

蛍光管リサイクル協会

代表理事 原  強

 

蛍光管リサイクル協会は、2020年度、京都市ごみ減量推進会議の助成を受け、「あらためて電池について考える」をテーマに調査研究に取り組んでいます。

本日の公開研究会は、この調査研究事業の核になる企画です。みなさまの積極的な意見交換をお願いします。

 

今回の調査研究について、当初の「調査研究計画」では「調査研究の背景」「調査研究の目的」として、以下のようにのべています。

<調査研究の背景>

これまで電池に関わっては水銀問題との関連で乾電池の適正処理の方法が検討されてきました。この点についてはメーカー・業界団体として「水銀ゼロ使用」の方向を示したことによって基本的に問題は解決しているといえます。しかし、乾電池の処理にあたる野村興産からのレポートでは、乾電池の処理にともない、なお水銀が回収されているということです。

他方では、ボタン電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池など、さまざまな電池の使用がひろがるなかで、これらの電池が廃棄物として排出・処理される過程で不適正な排出事例が見られます。また、電池由来と思われる「発火事故」も多発しているといわれています。

このようななかで電池の適正な排出・処理(再資源化をふくむ)の現状や課題を確認し、こんごの方向を明らかにすることが求められています。

<調査研究の目的>

今回の調査研究では、「電池と水銀」について歴史的な経緯を確認するとともに、乾電池の排出・処理(再資源化をふくむ)の実態・課題を確認し、こんごにむけて必要な対策を検討することにします。

また、「電池由来の発火事故」についてその実態をあきらかにし、メーカー段階での対策、廃棄物として排出・処理される段階での対策を検討することにします。

 

この間、京都市ごみ減量推進会議の助成を受けるにあたっての審査会での質疑、事業計画の具体化、文献等での調査、関係者との情報交換のなかで感じたこと、確認できたことを報告しますので、今日の意見交換を通じてみなさまに深めていただければ幸いです。

 

第1の論点 「電池と水銀」について

 

1980年代まで、一次電池には水銀が使用されてきました。その使用量は、乾電池の主流がマンガン電池からアルカリ電池になるにつれ、桁違いに増えていったのです。しかし、それらが使用済みになったときの水銀対策は取られていませんでした。

その問題点を、1983年、「暮らしの手帖」が「乾電池の中には水銀がいっぱい――大気と大地と水を汚染しないために乾電池の回収を」という特集記事でとりあげたのです。

この記事のあたえたインパクトはとても大きく、これが発端となり、「乾電池問題」が社会問題になり、問題の解決策が検討されることになりました。

多くの市町村では、家庭から排出された乾電池をそのまま焼却するか埋立てしていたのですが、「暮らしの手帖」の記事を機に、乾電池を分別回収し、適正処理するための取組みが準備されることになりました。

全国都市清掃会議の「使用済み乾電池の広域回収処理事業」の枠組みが準備され、使用済み乾電池は全国の市町村から北海道の「野村興産イトムカ鉱業所」に送られ、確実に水銀回収されるシステムが作られたのです。

他方では、メーカーに「乾電池の無害化」を求める声が集中するなかで、乾電池を生産する段階での水銀使用削減の取組みが進められ、1992年頃にはマンガン乾電池やアルカリ乾電池の「水銀ゼロ使用」が実現するにいたります。

その後、ボタン電池についても水銀使用削減の取組みが進められてきました。

 

このような取組みの結果、「水銀に関する水俣条約」(2013)をふまえた国内対策として示された「家庭から排出される水銀使用製品の分別回収ガイドライン」(2015)でも、「我が国で流通している主な水銀使用製品」として、電池についてはボタン電池(空気亜鉛電池、酸化銀電池、アルカリボタン電池)に対象製品をしぼりこんでいます。

しかし、乾電池の回収にあたっては「古い乾電池や海外で生産された乾電池をそれ以外の乾電池と区分して回収することは現実的には難しく、また、乾電池に含まれる亜鉛、マンガンなどは資源としての利用価値もあることから、できるだけ乾電池は「乾電池」という区分でまとめて分別回収することが望ましい」としています。

つまり、使用済み乾電池の回収にあたっては、水銀使用製品として指定されているボタン電池にとどまらず、乾電池全般についてひきつづき「水銀対策」の対象として水銀の環境汚染リスクを管理しながら、同時に「資源の有効利用」の視点からも考えていく必要があるというのです。

 使用済み電池の回収にあたってはこのような「ガイドライン」の認識をふまえ取り組みを進めることが必要です。

 

第2の論点 電池由来の発火事故について

 

 電池由来の発火事故がいろいろ報告されています。その実態は、製品事故から回収・保管段階での事故までさまざまなようです。パッカー車の発火事故は知られていますが、パソコン、スマホなどの製品事故もずいぶんあるようです。その実態と対策を明らかにしていくことがひとつの課題でしょう。

 

 今回、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)、日本容器包装リサイクル協会、京都市から情報提供をいただきました。

 

<製品使用段階での事故>

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)によれば、スマホやノートパソコン、電動工具などにリチウムイオン二次電池が広く使用されるようになり、それにともなう製品事故が増加しているということです。NITEに通知された製品事故情報によれば、2014年から2019年までにリチウムイオン二次電池搭載製品の事故は、合計982件にのぼるといいます。これらの製品事故の原因については現品の焼損が著しいなどの理由により解明できない事例が少なくないようですが、NITEでは、ひとつの問題として非純正バッテリー(いわゆる互換品として販売されている他社製のバッテリー製品)に由来すると思われる事故事例が目立つことから、非純正バッテリーの使用について注意喚起をしています。

 

<使用済みリチウム二次電池等に由来する発火事故>

日本容器包装リサイクル協会は、同協会のホームページの「リチウムイオン電池等の発火物が原因になる発煙・発火トラブル」とする記事で、「乾電池や、その他の電池についても、発火の可能性はありますが、リチウムイオン電池は中に燃えやすい液体が入っていることもあり、発火リスクが高いといわれています。リチウムイオン電池は、プラスチックリサイクル工場における第一段階である「ベール解砕機」や「破袋機」の刃によって、リチウムイオン電池が押し潰されて、ショート・発火し、周囲にあるプラスチックに着火してしまうことがあります」というのです。

そして、全国の再生処理事業者での発煙・発火トラブル件数について、平成25年度、32件、26年度、41件、27年度、42件、28年度、49件、29年度、56件、30年度、130件、令和元年度、301件と、その急増ぶりを紹介しています。

 

<京都市の事例>

京都市では、平成31年3月20日(水)に東北部クリーンセンターの破砕施設内で火災が発生し、当該施設のベルトコンベヤ等が焼損する事故があったとのことです。火災の原因は、持込ごみの中のカメラに内蔵されていたリチウムイオン電池が発火したものとみられています。火災の被害により、同クリーンセンターでの持込みごみの受入れを全面停止し、施設の全面復旧及び持込みごみの受入れ再開には、約半年間を要したとのことです。

 

 以上のような電池由来の発火事故を防止するために、広く消費者・市民に必要な情報を伝えるとともに、行政、事業者、関連団体がさらに連携を強め、適切な回収システムをつくりあげる必要があります。

 

 また、二次電池のリサイクル・再資源化の取組みが始まっていますが、どのようにとりくまれているのか、その実態を把握し、こんごの可能性を探るということもこんごの課題になるでしょう。