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蛍光管リサイクル協会が果たしてきた役割

蛍光管リサイクル協会が果たしてきた役割

 

一般社団法人蛍光管リサイクル協会は、5月10日の総会の「解散」議決にもとづき、解散・代表清算人の登記や官報への公示など、清算手続きに入っています。

このなかで、これまでの活動のふりかえり、保存すべき記録・データの整理ということも重要な課題になっています。

これからこのホームページでも関連する情報を掲載していくことにしますが、今回は蛍光管リサイクル協会が果たしてきた役割についての基本的な視点をまとめてみます。

1 「蛍光管の適正処理」を求める問題提起と啓発

一般社団法人蛍光管リサイクル協会は、2010年10月1日に設立して以来、蛍光管の適正処理のための社会システムづくりをめざして活動してきました。すなわち、蛍光管には水銀が含まれており、それが廃棄物になったとき、適正な処理がもとめられることから、一般廃棄物の処理にあたる市町村に対しては蛍光管の分別回収システムを求めるとともに、事業者に対しては水銀含有廃棄物を取り扱うことができる廃棄物処理業者に産業廃棄物として排出することを促してきました。

この問題提起と啓発活動は、もともとはコンシューマーズ京都の「家庭からでるやっかいなごみ」の適正処理を求める活動にさかのぼります。

コンシューマーズ京都では、「家庭から出るやっかいなごみ」の適正処理を求めて、実態調査や行政・事業者団体との対話を行っていたのですが、2005年、環境省の「エコ・コミュニティ事業」として「家電販売店と協働して蛍光管の適正処理システムづくりをめざす」というプログラムが採択され、「われる、かさばる、水銀がはいっている」という「家庭からでるやっかいなごみ」の代表格というべき蛍光管の適正処理を求める活動が始まったのです。

この社会実験をともなう活動は大きな反響をよび、この取組みをうけるような形で、2006年10月、京都市では蛍光管の分別回収が始まったのです。

他方では、事業所から排出される蛍光管についても、当時、少なからぬ事業所で分別排出が行われていないという実態がありました。事業所から排出される蛍光管の量は、家庭から排出される量に比べてとても多く、蛍光管の適正処理をめざすならば、事業所から排出される蛍光管の分別排出を求めていくことが課題として認識されたのです。

この課題を解決するための活動のなかで、一般社団法人という法人格をもった組織として、蛍光管リサイクル協会が設立され、コンシューマーズ京都と協働し、事業所向けの啓発活動がすすめられたのです。

このような「蛍光管の適正処理」を求める問題提起と啓発活動は他に例のないもので、その役割はとても大きかったといえます。

2 「水銀条約」に対応する国内対策の提案

 このような活動がすすめられるなかで、「水銀に関する水俣条約」が、2013年10月10日、採択されました。この「条約」のもとで、水銀の輸出入規制、水銀使用廃製品の適正処理、水銀の管理保管システムの構築など、さまざまな取組みがすすめられることになりました。

蛍光管リサイクル協会では、コンシューマーズ京都とともに、「条約」の採択、それにともなう国内対策の準備にいたる経過のなかで、「蛍光管フォーラム」「水銀条約セミナー」の開催などを通じてタイムリーな情報提供、意見交換の場を持つとともにくりかえし提言を行いました。

また、より有効な国内対策を実現することをめざし、京都市をはじめ京都府内の自治体から意見書を提出してもらうための議会陳情活動にも取組みました。

 「水銀に関する水俣条約」は2017年8月16日に発効し、「条約」に対応する国内対策についても「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が成立したのをふまえ、関係する政省令が順次施行されました。

各市町村では家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」をふまえた取組みがすすめられ、蛍光管とともにボタン電池、水銀体温計、水銀温度計、水銀血圧計など水銀使用廃製品の回収方法が市町村の実態に即し具体化されていくことになりました。

 事業所から排出される水銀使用製品についても、廃棄物処理法と「水銀廃棄物ガイドライン」にもとづく新しいルールにしたがうことが求められるようになったのです。

このように、「水銀に関する水俣条約」のもとで、国内対策として水銀含有廃棄物対策がすすめられてきたことにより、私たちが求めてきた蛍光管の適正処理のルールが次第に定着してきたといえます。

3 共同排出・共同回収のシステムづくりと運用

事業所から排出される蛍光管は「産業廃棄物」として取り扱われ、「排出者」の責任で適正処理することが原則とされるのですが、蛍光管の適正処理を求める活動を始めたころは、前記のとおり、大手の事業所では環境マネジメントシステムの一環として蛍光管の分別排出が行われていましたが、少なからぬ事業所において分別排出が行われていないという実態がありました。

この実態をふまえ、事業所から排出される蛍光管の適正処理を求めるために、京都ビルヂング協会の会員事業所の協力を得て蛍光管の共同排出・回収の実験を行ないました。実験は、決められた日に、蛍光管の適正処理につながる廃棄物処理事業者の収集車をチャーターし、協力いただく事業所を巡回するという方式をとりました。

この実験的な取組みを通じて、中小事業者のための蛍光管の適正処理につながる共同排出・回収システムの枠組みが作られ、蛍光管リサイクル協会がこの活動をコーディネイトすることになったのです。そして、この活動が蛍光管リサイクル協会の根幹になってきたのです。

蛍光管リサイクル協会では、年2回(8月、2月)、共同排出・回収の日を決め、廃棄物処理事業者の収集車が、このシステムを利用される事業所を巡回し、蛍光管の回収をおこなってきました。このシステムは、とくに小規模な事業所にとっては、確実に、低コストで蛍光管の適正処理ができるということで評価されたといえます。

また、このなかで要望に応え、乾電池の回収も行うようになってきました。

しかしながら、照明の主役が次第に蛍光管からLEDに代わるなかで、排出される蛍光管そのものが減少傾向になってきました。このことは、今回、蛍光管リサイクル協会が解散することになった背景として無視できないものでした。

4 LEDや電池のリサイクルに関する調査・研究

 蛍光管リサイクル協会では、蛍光管の適正処理という範囲をこえて、LEDや電池のリサイクルに関する調査研究を行いました。

2019年、蛍光管リサイクル協会は調査研究「LEDのリサイクルの可能性を探る」にとりくみました。調査研究の手法としては、先行研究の調査をふまえ、関係者のヒアリング、現場見学、LED手分解実証事業にとりくみ、調査結果を報告する「LEDフォーラム」を開催し、関係者と意見交換を深める機会にしてきました。

 調査研究の結果、LEDのリサクルは手分解であれ、機械破砕であれ、技術的には可能であることがわかりましたが、他方で、事業として成立させるためには課題が多いことも確認されました。なかでもいかに効率よく回収し、リサイクル事業者のところに集めることができるか、そのためのコストに見合う「売却益」がえられるかという問題はなかなかむつかしい問題です。現実的にはリサイクルコストをだれがどこで負担するのかという問題に直面することになりそうです。

 また、2020年、蛍光管リサイクル協会は調査研究「あらためて電池について考える」に取組みました。今回の調査研究では、「電池と水銀」について歴史的な経緯を確認するとともに、乾電池の排出・処理(再資源化をふくむ)の実態・課題を確認し、こんごにむけて必要な対策を検討してきました。また、「電池由来の発火事故」についてその実態をあきらかにし、メーカー段階での対策、廃棄物として排出・処理される段階での対策を検討してきました。

 これらの調査研究は、いずれも京都市ごみ減量推進会議の助成事業としてすすめられたのですが、調査期間が限られたこともあり、政策提案をするまでの掘り下げができずに終わったのは残念でした。

 

以上、蛍光管リサイクル協会のあゆみをふりかえり、その果たしてきた役割について考える場合の基本的な視点をあげてみました。これから蛍光管リサイクル協会の活動をふりかえり、保存すべき記録・データを整理する際の指針にしたいと思います。